「ノマドランド」★★★☆ [映画日記]
製作・主演のフランシス・マクドーマンド、入魂の作品です。
入れ込んでんの!
米国の経済危機で職も家も失い、車上で暮らすことになった女性を描いている、ということで。
ジャンルは「貧困もの」かな、と思っていたのですが。
「ボンビー映画」かな、と思っていたのですが!
たしかに貧困から物語が始まりますけども。
結局は、1人の女性が、自分らしい生き方を選ぶ物語だったと思います。
開放感ですよ!
今思えば、冒頭でフランシス・マクドーマンド演じる主人公ファーンが、荒野で豪快に野ションしてましたけども。
ご放尿ですよ!
あれは「解放」を意味していたのかも〜。
物語が始まるとすぐに、ファーンの車上暮らしが開始〜。
もう早速!
ものっすごい田舎で、岩とか山とかの風景の中、人気が一切ない道を走るバン。
冬の夜に、車内で1人ぼっちで過ごすファーンの姿とか、荒涼感と孤独感がハンパない状況。
観ているだけで凍えてくる〜。
冷えてくんの、足元!
スースーすんの!!
あらゆる田舎で短期間の職を得て、契約が終われば移動するという、良いことなんて何もなさそうな生活で「これホントに舞台は現代の米国なんですか?キラメキがが一切ありませんけど?」と思いました。
キラキラしたサラ・ジェシカ・パーカーが住んでいる国とは信じ難い状況ですよ!
ファーンが車上生活者のコミュニティと出会ってからは、美しい音楽や絶景が目立つように。
車上生活者たちには、詩、美、思想がある、という描き方で、「ノマド」の意味通り、まるで遊牧民族みたい。
余計な物や財産は持たないという、キレイな言い方をすれば「究極のミニマリスト」みたいな人々。
ジャンルが確立されてんの!
彼らの人間関係は穏やかで、絆はあれど、性的な要素は、ほぼなくて、それもどこか「民族愛」っぽい。
経済破たんの副産物である「車上暮らし」ですが、その生活も長すぎて、社会問題というよりは「こういう文化に仕上がった」という過程が、なんとなく伝わってくる展開。
そんな点は「アメリカの現状」の表現なのですが、フィクションとしての人間ドラマ部分も、シンプルながら味わい深いです。
何もないような車上暮らしですが、時に家族から、時にパートナー候補から「共に家で暮らそう」と誘われるファーン。
安定した過去と未来が心を揺さぶんの!
そこで、ブレずに貫く信念というか、プライドというか。
「自分らしく生きたい。アタイの人生は自分で決める。たとえ今、60歳でもね!」みたいな強さに、感動すら覚えました。
目に焼き付いたのは、フランシス・マクドーマンドが河にプカプカ浮いてるシーン。
行水ですよ!
普通に全裸になっていて本気を感じました。
耳にこびりついたのは、フランシス・マクドーマンドの排便シーン。
桶への脱糞ですよ!
いい音してました。
あの音から察するに、結構はね返っていたね!
これらのシモネタ芸を観たとき、「この人はアカデミー賞をとる」と確信しました。
スッピン、全裸、排泄…60過ぎて、ここまで己の醜態を見せられる大物女優はフランシス・マクドーマンドだけ、と思いました。
過去の出演作「スリー・ビルボード」でもアカデミー賞をとったフランシス・マクドーマンドですが。
今作での名演技は、それを越えていると思います。
フランシス・マクドーマンドと、共演のデヴィッド・ストラザーン以外は、本物の車上生活者と知ってビックリ。
みんな演技が上手すぎる〜。
ギャラでタイヤでも買いなね〜。
観ましたよ~。いや~、自分の今後の生活がめちゃめちゃ不安になりました。
フランシス・マクドーマンド(長い!マクド、マク子、またはクドマンでどうでしょう)が水に浮いているシーンは、「かもめ食堂」のプールを思いだしました。憑依型俳優クドマンおそるべし!
by M (2021-04-11 10:45)
Mさん。
クドマンって良いですね!いつかクドカン脚本作に出て「クドマン&クドカン」コンビ、って言われてほしい〜。鑑賞中は僕も「明日は我が身」と思いました。心配事は「老い」という表現もありましたね、体調悪くなったときとか困りますし。「かもめ食堂」は観てないのですが、どうやら「全裸プール」の場面があるようですね〜。
by のむら (2021-04-11 17:16)
全編地平線が連なり、常にサワサワ風が吹き渡る詩的なドキュメンタリーの様。マクドーマンドはもはや女優と言うよりノマド本人。エンドタイトルに延々と現れる本物ノマドにも愕然。いったいアメリカは何処へゆくのだろう。今流行りの黒人やビスパニックの人種問題がからままなかったのが不思議だったが。見終わった後何故か清々しい諦観に襲われる映画だった。余談だが、助演賞はさすがにそろそろグレン・クローズにあげてほしいものだ、
by ちびまま (2021-04-13 19:26)
ちびままさん。
僕も今年のアカデミー賞は、マクドーマンドとグレン・クローズで決まりでしょう!・・・と思います。彼女たちの「スターのオーラを完全に消し去った素人感」は素晴らしいですね。今回のマクドーマンドは、本気を感じるノマドの役作りがスゴかったです。作風は、ドキュメンタリーとフィクションの融合という感じで、引き込まれましたよね〜。
by のむら (2021-04-13 23:51)