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「オッペンハイマー」★★★ [映画日記]

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あやうく配信スルーになりそうだった問題作が、ついに日本上陸〜。

 

炎上覚悟で大公開じゃーっ!

 

「原爆の父」として有名な学者さん、ロバート・オッペンハイマーさんの人物像に迫る「伝記もの」ですけども。

 

まあ、何というか、正直言って、日本人として作品の第一印象は不愉快ですね。

 

日本では「あやうく配信スルー」になりかけたことも納得いたしました。

 

嬉々として原爆開発に取り組むオッペンハイマーさんと制作チーム、実験に大興奮するアメリカ人、爆弾投下の作戦会議など、あらゆる場面がくそ忌々しいです。(苦笑)

 

原爆開発後のオッペンハイマーさんは色々と反省していたり、「原爆の開発は世界破滅への第一歩になった」みたいな、反戦を意識した場面もあるには、ありましたけども。

 

この映画を観て、アメリカ人客の反戦意識が高まるとは、到底思えない。

 

反戦メッセージは弱いと感じました。

 

「結局は原爆商法の映画なんだよね」と思ってしまいました。

 

クリストファー・ノーラン監督のことは大好きですけども、今回ばかりは「余計な映画を作ったね。他にも面白い題材はあるでしょうに」と思ってしまいました。

 

とはいえ。

映画という制作物としての完成度はズバ抜けて高いと思います。

 

本編時間が3時間もあり、その間ずっと物理学の話が延々とセリフで交わされているにも関わらず、退屈知らず。

 

物理と戦争という題材を、美しい音楽に乗せて、どこかフワ〜ッとした浮遊感で魅せる「原爆叙事詩」みたいな作風は、明らかに巨匠タッチでした。

 

オッペンハイマーさんを巡る人物相関図も、多くの著名な学者を交えて、複雑で興味深いです。

 

とくに、脚光を浴びるオッペンハイマーさんの陰で、陰陰滅々と恨み節を唱えながら過ごしているロバート・ダウニー・Jr.演じる男性キャラクターが際立って目立っていますね。

 

オッペンハイマーさんと、ロバート・ダウニー・Jr.演じる男性は、映画の中で強力なドラマ性とコントラストを生み出していたと思います。

 

また、チョイ役で出てくる男性キャラクターを演じているのが、ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ゲイリー・オールドマンなど、見事にアカデミー賞クラスのトップ男優たちでビックリ。

 

「あ〜あ。みなさん、こんな映画に喜んで出なすって」と思いながらも、1人の映画ファンとして「豪華で見応えがある」とも思ってしまいました。

 

女性キャラクターでは、オッペンハイマーさんの愛人役フローレンス・ピューが、本格的に脱いでいて驚きました。

 

賞レースでは、フローレンス・ピューが助演女優賞候補になってもいいと思いましたけど。

 

実際に助演女優賞候補になったのは、オッペンハイマーさんの妻役を演じたエミリー・ブラントなんですよね〜。

 

これではピューの「脱ぎ損」!

 

本編を観てみると、エミリー・ブラントが演じる妻の女性像の方が、現代的だと思いました。

 

というわけで、演技の見どころはあるし、ドラマ性も十分、映画作りのセンスも技術もバツグンでした。

 

アメリカ人が原爆を作って喜ぶ、というくそ忌々しい場面が頭から離れませんけども。

戦争とは、そういうものですしね。

 

戦っている相手のことなんて考えないし。

 

アメリカ人の純粋な気持ちを見たような気がします。

 

 

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オッペンハイマー 上 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇

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