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「PERFECT DAYS」★★★☆ [映画日記]

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ヴィム・ヴェンダースさんの「頼まれ仕事」映画が爆誕〜!
 
ヴィムさんが手掛けた作品とは思えぬポップさに驚いています。
 
元々「日本の公衆トイレ刷新事業PR映画としての企画」とのことなので、トイレのCM感があるのは仕方ないですね。
 
日本の広告クリエイターが口添えしたのか、随所に「これ、かっこいいでしょ?」みたいな、文化センスの押し売り感も、まあまあございます。
 
「あざとさ」あるんですよね〜、あざとカワイイ子みたいな!
 
石川さゆりさんを起用して、ちっちゃいスナックで歌わせるなんて、いかにも広告クリエイターの発案っぽい〜。
 
世界の賞レースでウケる気マンマンの「戦略的アート映画」(←矛盾)と言っていいかもしれません。
 
しかし、今作は、その「広告代理店的・感覚」から一歩踏み込み、ヴィムさん独自の感性で東京を表現している点が良かったです。
 
東京を舞台とし、主人公で年配の独身男性である平山さんは、日々、粛々と公衆トイレの清掃仕事をなさっている、という設定。
 
ほぼ全編、朝起きて、夜寝るまでの行動を追っています。
 
「業者さんのルーチン動画」を見させられている状態ですよ!
 
毎日が同じようで、ちょっと違うという点で、人間ドラマを発生させているのですが。
 
ドラマ・パートは「後付け」な感じで、まあまあ平凡なのですが。
 
平山さんがテキパキと清掃する場面を眺めているだけで、なんか感動する〜。
 
清掃エモーションですよ!
 
わたくしたちは、日々の生活で公衆トイレを使うことはありますけども、清掃員のことを考えたことなど無いに等しいと思うのです。
 
トイレの入り口に「清掃中」と書かれた看板があったら、「なんだよ〜、掃除中か〜」って思うだけですよ。
 
しかし、今作を観て「そういえば、いつも公衆トイレがキレイなのは清掃員のみなさんが掃除してくれているからなんだよね」と、ふと思いました。
 
ハッとしました。
 
気づいたんですよ、我に返ったのです!
 
つまり、わたくしたちトイレ利用者は、普段、トイレの清掃員のことは見えておらず、ゴーストのような存在かと思うのですが。
 
なんと劇中では、清掃員からの目線では、わたくしたちトイレ利用者の方が、ゴーストのように感じているんですよね。
 
トイレ利用者と清掃員は、表と裏。
 
光と影。
 
「あながた太陽なら、私は月」みたいな関係性ですよ!
 
そして、主人公の平山さんはアナログ派。
 
読書は紙、写真撮影はフイルム、音楽鑑賞はカセットテープですよ。
 
ちょっと、テープて!
 
デジタルや、テクノロジーの最先端という、東京のイメージを逆手に取っていますね。
 
総じて、東京の裏側や、美徳、つつましさを描こうとしている点が、とっても良かったです。
 
「日本の公衆トイレ刷新事業PR映画としての企画」発端でありながら、東京自体をここまで掘り下げて表現できたのは、やはり外国人としての視点を持つヴィムさんだからこそだと思います。
 
外国人が、日本を誉めてくれているような気持ちになるのもうれしいですね。
 
 
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  • 発売日: 2023/11/20
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内幸町

のむらさん
私は、1月3日に観に行きました。
役所さんの住んでいたアパート
スカイツリーあたりを散歩したらあるのかな?
アパートの隣の神社も気になる。

あのトイレにあった〇✖の紙。
映画を観た誰かが
同じような事を
するかな?

石川さゆりさんの元夫が三浦友和さん
役所さんを追いかけてきたのかな?
かげふみしちゃうなんて楽しい素敵な大人です。
by 内幸町 (2024-01-06 22:40) 

のむら

内幸町さん
丸バツの紙、やってみたい気になりますよね!お互いの姿が見えないままコミニュケーションをするという、ステキな場面でしたよね。影ふみの場面も、東京の裏側で生きる人たちの存在感をファンタジックに表現していて良かったです。名場面の多い作品でしたよね。




by のむら (2024-01-07 21:30) 

ちびまま

役所広司さんがとても良かったです。たぶん義理の妹さん?
連れ子?と訳あり感も。しかしながらどうしても1点疑問が。ふいに訪ねてきた姪ごさんと仲良く自転車で走り回るシーンがあるのですが、待てよ一体あの姪の自転車はどこから出て来たんでしょ。あんな、ボロアパートのそばにレンタサイクル屋が都合よくありそうも無いし、どこかに返した様子も無い。妙な所が気になって集中が削がれました。まさかヴィムさん、日本には勝手に使っていい自転車がその辺に転がってる、と思ってないでしょうね(笑)
by ちびまま (2024-01-11 03:44) 

のむら

ちびままさん。
なるほど、確かに、2台目の自転車はどこから?!わざわざ買ってあげたのでしょうかね?!どっかから借りてきたのかもしれませんね。役所広司さん、役にハマってますよね〜。演じる男性が住んでいたのはボロアパートですが、キレイ好きな人だから室内は清潔だし、なんか住み心地も悪くなさそうでしたよね。
by のむら (2024-01-11 17:12) 

sakaya

とってもお久しぶりです。
最近劇場で見ようと思ったのコレぐらいなんですよね、ド大作の情報しか入らないものだから。
受賞作の割にPRが少ないので東京都に都合の悪い表現でもあるの?と思ってたら、意外にも商業ミッション多めだったのかな?
見たら見たで楽しそうですが、妙に美しすぎるヴェンダースの思い出をアップデートしていいものか悩んじゃう。
by sakaya (2024-01-18 16:24) 

のむら

sakayaさん。
ごぶさたしております!今、ヴィム・ヴェンダースさんの作品が大きな映画館で流れるのは珍しく、喜ばしいことですね。今作は確かにヴィム・ヴェンダースさん監督作ではありますが、日本人が頼み込んだ「企画もの」なので、美しい思い出があるのなら、とくに観る必要もないかな、と思いますよ。
by のむら (2024-01-18 22:12) 

けい

いやー、上映中にすべりこみで観れました。
わたくしもちょくちょく利用させて頂いているお便所のお掃除をしている主人公の日常のお話。さっさと出てきたものの、はっ、ここの便器だとうんこの跡は自分だってばれるっ!と引き返して便器をふきに行ったことを思い出しました(笑)。
わたくしも一日一日を丁寧に生きていきたいと感じました。

by けい (2024-03-16 20:00) 

のむら

けいさん。
劇場で観れて良かったですね!けいさんの公衆便所エピソードも、映画になりそうなくらい面白いです!いつも使用していながら心を素通りしていくものに焦点を当てていて、観客に「気づき」を与えてくれる映画でしたね。「外人監督が撮る日本の美徳」という観点も良かったですよね。
by のむら (2024-03-17 14:12) 

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