「落下の解剖学」★★★☆ [映画日記]
カンヌ映画祭でパルム・ドール受賞他、米アカデミー賞にも主要部門に多くノミネートされているフランス製の注目作です。
「どんな作品なのかな〜」と思って観てみたら、本格ミステリーなんですね。
「名探偵コナン 落下の解剖学」みたいな感じですよ!
女流作家宅の3階から夫が転落死、果たして妻が殺したのか?っていう不審な事件の真相を追う物語。
主軸の事件内容は超シンプルなのですが。
事件を取り巻く環境、関連人物の心象がとことん複雑で、もう最高〜。
世界的に評価されているのも納得できる、高品質で深みのある内容でした。
劇中、主人公は裁判にかけられたりもするのですが。
妻として、母として、職業を持つ女性として、人物の本質をえぐり出されることに。
そのうち転落死した夫についても法廷で説明されて、夫婦や男女の本質をえぐり出されることに。
ついに11歳の息子まで巻き込んで、家族の本質までもがえぐり出されることに。
内面のえぐり出し方がすさまじい、えぐり出し大作に仕上がっていました。
「解剖学」とは、よくぞ付けたタイトルだと思いました、本当に主人公たちは「解剖」されていたと思います。
「マインド解剖」ですよ!
事件の真相とは別に「人間って、どうしてこうなんだろうね。どうして、こういう時、こういう態度をするんだろうね」と、「人間性とは何か」と考えながら鑑賞いたしました。
ミステリーのクオリティも素晴らしく、一応物語に決着は付くのですが。
物語の決着とはマ逆の解釈も(多分)可能という、優れた脚本になっています。
これは、観客が結末をどうにでも解釈できる「マルチ・エンディング」映画だと思います。
逆の解釈で、もういっぺん最初から見直してみたい気持ちになりましたよ。
演出面でも、夫が「いつも大音量で聴く」という、50セントによる楽曲「P. I. M. P.」が効果的に作用。
めちゃめちゃ耳障り!(←褒め言葉)
「その、50セント。はよ消せ」と思ってしまいました。(←褒め言葉)
曲イメージが、とってもカオスで、嫌なパッションを感じさせて、観る者の心を乱します。
選曲センスもスゴいと思いました。
演者さんたちの中では、何といっても主人公を演じたザンドラ・ヒュラーさんの存在感、人間味が目を引きますね。
もうこれで「ドイツNo.1女優」の座をもらったようなものですね。
鎮座決定ですよ、ドイツの玉座に!
子役の目力もいい感じでしたけども。
注目するキャラクターは犬ですね。
ワンコですよ、ワンワン!
ある見せ場でのワンコが名演技。
「どうやって犬からそんな表情を引き出した?」と思って、ビックリしました。
このワンコ、カンヌ映画祭では、優れた演技の犬に贈られる「パルム・ドッグ賞」を受賞したとのこと。
監督や女優さんの次回作も気になりますが、ワンコの次回作も観てみたいですね。
2024-03-04 21:00
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コメント(2)
正直、カンヌのパルムドールを獲るほどかねぇ、とは思いましたが、カンヌは結構斜め行くからなぁ色々かんがえすぎて息子まで疑ったり、どうしても最後はどんでん返しを予想してしまいました。ドイツ版ジュディ・ディンチさんの存在感が半端ない、ぜったいああ言うひといるわぁ、と納得だし、誰がどんな役割か分からんやたらに裁判関係者が並んでたり、被告が変な所に座ってたりするフランスの裁判所の構造も面白ろかった。ハスキーかピレネーか分からないけど、ワンちゃん演技がやはり凄ごかった。デコピン顔負けの人気さらいそう
by ちびまま (2024-03-05 21:47)
ちびままさん。
息子さんまで疑ってしまったんですね!確かに、今思えばあの息子さん、怪しくもある〜。被告の座る位置、そういえば変な場所でしたね。机には書類が山積みだし、裁判風景も国によって全然違うものですね。犬を話題にしてしまうところも、お上手でしたよね。同じ制作陣での新作も観たいですよね。
by のむら (2024-03-06 19:56)