「ヤクザと家族 The Family」★★★☆ [映画日記]
この映画オモローイ。
ヤクザに魅了!
感触としては、西川美和監督作「すばらしき世界」に近いものがありますね。
「令和のヤクザは切ない」路線。
「ヤクザはピュア」路線ですよ!
劇中では、およそ20年の歳月が流れますけども。
時代の流れで、ヤクザ稼業が、どんなふうに衰退していったのかが、分かりやすく描かれています。
1990年代のエネルギッシュな暴力行為、華々しい権力抗争という、昔ながらのヤクザ表現から、令和の寂れたヤクザ表現へのギャップが凄まじい。
それに伴う人間ドラマが悲しすぎる〜。
今やヤクザや元・ヤクザは低収入で、世間から爪弾きにされる生活弱者だという。
「社会の闇、人間の闇」ですわな。
たとえ元・ヤクザが人を愛したとしても、相手からは煙たがれる、という場面がかわいそう。
好いて抱いた女から「アンタがいない時は人生うまくいってた。出てけーーっ!」と絶叫される場面とかは、泣きました。
主演のヤクザ役は綾野剛さんですけども、どうしてこんなに映画に出るたび毎度毎度、上手いんでしょうか。
この役で、本家のアカデミー賞でも狙えますよ。
組長役は舘ひろしさんですよ、舘ひろしさん。
猫ひろしさんじゃありませんから!
舘さんの演技を「組長にしてはダンディすぎるし、オシャレすぎる。こんな優しい組長もおらん」と思いながら観てましたけども。
それらの風合いは、「優しい父親風」という監督のオーダーによるものらしいです。
市原隼人さんの役が小さすぎてビックリしました。
あの隼人さんが子分役ですから!
「よく事務所は、こんな役を引き受けたな」と思ってましたけども、終盤まで観ると納得。
まあまあ良い役でした。
「ヤクザと家族」というタイトルも「なるほど」で、確かに「現代のヤクザは家族を持てない話」になっていましたね。
製作は河村光庸さん、監督・脚本は藤井道人さんという「新聞記者」で一発当てたコンビ。
新聞コンビですよ、紙コンビ!
今作を込みで、もしかして「日本のタブー」シリーズなのでしょうか?!
藤井道人さんなんて、今34歳ですよ。
この若さで、良い感じのヤクザ大作を作り上げるって、たいした手腕だと思います。
とくに今作では、若い監督だからこそ描けた「令和型・新チンピラ像」が斬新。
それはヤクザのポジションを奪う存在で、磯村勇斗くんが演じているのですが。
SNSやスマホカメラを駆使して有力者を脅し、昔のヤクザを一切恐れない、新手の人種。
ヤクザの親分宅に上がり込んだときは、磯村勇斗くんの子分はスマホで動画撮影をしながらの入室。
チンピラ・ユーチューバーですよ!
チンピラ新時代の幕開けを感じました、ITチンピラの夜明け!
磯村勇斗くんの役を主人公にした、スピンオフ作品を観てみたいです。