「悪は存在しない」★★★☆ [映画日記]
「ドライブ・マイ・カー」で世界的に一発当てた濱口竜介監督の新作です。
ドラマイ監督作ですよ!
好みの映画ではありませんでしたが、今作も良い出来で、ヨーロッパ方面の映画祭で評価されそうなアート路線になっていましたね。
冒頭から、ユルユルのアート映像が流れっぱなしで、早速「果たして今作を楽しめるのだろうか」と不安になりましたが大丈夫。
無問題(モウマンタイ)!(←死語)
そのうちジワジワと人間ドラマが盛り上がり、最後は観客を唸らせてしまうという、映画的・醍醐味を兼ね備えているアート作品でした。
主人公は、長野の山の方でスローライフを楽しんでいる男性。
山道歩いて水を汲み、薪を割って過ごしている、C・W・ニコルさんみたいな日本人!
「これでトトロが出てきたらジブリアニメだよね」と思いながら鑑賞続行。
そんな彼と地元民の元に、東京の企業から営業部員がやってきて「ここに施設を作りたい。悪いけど汚水流します」と告げる展開に。
よそ者が地元を荒らそうとするんですよ、土足で!
「ビジネス優先の人」「ビジネスを全く優先しない人」「ビジネスを優先しようか、しまいか分からない人」が接触し、入り乱れ、マイルドな修羅場が形成。
東京の企業にはイケメン・コンサルタントが付いているのですが、車の運転席からリモート会議で営業部員に「地元民を支配しなさい。僕は地元には行きませんから、アンタたちでやってください」的な指令を、上品な言葉と丁寧口調で発令。
嫌味全開で、腹立つ~。
同時に「こういう人いるいる~」とリアルに感じました。
濱口竜介監督も、嫌味な人に会って苦労なすったのかな〜、と思いました。
物語では、東京の企業とイケメン・コンサルタントが「悪役」という位置づけになるのですが。
彼らはビジネスしているだけだし「悪」とは違うのかな、ビジネスしていると誰でも嫌味な人になりがちだよね、と思いつつ。
クライマックスまで鑑賞すると「悪徳」「悪意」「悪運」「憎悪」などの言葉に基づく、「悪」という概念は、実は存在しないのではないか。
悪に見えるものは、単なる役割か、瞬発的な動物の基本行動なのではないか。
そんなふうに思わせてくれました。(←だからタイトルは「悪は存在しない」なんですね!スッキリ〜)
観客への問いかけや提案を、アートな手法で行っているところが粋ですね。
静かながら、観客の心をかき乱し、考えさせて爪痕を残す。
濱口竜介監督の力量を感じる作品でした。
サンフランシスコの今日の新聞.....映画評論家による記事....
http://datebook.sfchronicle.com/movies-tv/evil-does-not-exist-review-19439389
Review: ‘Evil Does Not Exist’ is a noble, ambitious failure by Japan’s star director
G. Allen Johnson
http://roxie.com/film/evil-does-not-exist/
May 8, 2024, 10:44 am
by サンフランシスコ人 (2024-05-09 04:31)
サンフランシスコ人さん。
この映画、米国で、もっと話題になると良いな、と思います。謎めいたラストシーンが印象に残る作品です。
by のむら (2024-05-09 16:03)
「この映画、米国で、もっと話題になると良いな」
入場券販売は好調? Roxie Theater (http://jp.linkedin.com/company/roxie-theater) 5/30まで延長....
by サンフランシスコ人 (2024-05-16 07:14)
サンフランシスコ人さん。
日本でも「どうやら好調」とニュースになっていました。米国のお客さん、この映画を気に入ってくれるといいな。
by のむら (2024-05-16 15:32)