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「ファーザー」★★★☆ [映画日記]

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心配ですよね、老後。
 
ガンに、年金、痴呆症!
 
年金だけじゃ絶対に暮らせないし、貯金ないし。
 
ワシの老後はお先真っ暗、どうすりゃいいんじゃーーっ!!
 
今回の作品は、そんな老人の心配事の中でも、痴呆症に特化したもの。
 
たまに見かける「ボケ映画」というジャンルですよ!
 
東京では、渋谷の映画館「ル・シネマ」等で上映。
 
やっぱり「ル・シネマ」か、と思いました、あすこは老人映画をよく流す!
 
もはや、ボケ専門・映画館みたいな名所ですから!!
 
よくあるタイプの「ボケ映画」ですと、介護する人の苦労話がメインになりつつも、痴呆症の人との絆を確かめ合う、みたいな、感動路線になるものですが。
 
今作は、そういうやつとは全く違う。
 
これは、ボケ映画界のニューウェーブ!
 
1人のボケ老人が生活するだけのお話ですが、全てボケ老人の目線で表現されています。
 
劇中では時間と空間が飛びまくり。
流れている時が、現在なのか過去なのかも分からない。
立っている場所が自宅なのか、家族の家なのか、病院なのかも分からない。
 
「ここはどこ?私は誰?」の連続ですよ!
 
娘かと思った人物が、別人として現れたり、別人だと思っていたら、実は家族だったり。
登場人物が同じセリフを何度も言ったり。
 
これは、本格的な「ボケ・サイコ・スリラー」!
 
鑑賞中は「ワシ、本当に今、老人映画を観ているのだろうか?まるでメメントを観ているような、クールな映画の醍醐味を味わっているが?」と思ってしまいました。
 
「もしも自分がボケ老人になったときは、周りはこんな風に見えるのね」的な、バーチャル感もたまりません。
 
観客は、ボケた状態を擬似体験!
 
この映画を観れば、若いお客もボケられる!!
 
ボケた状態では、不安だし、孤独だし、本当に恐怖を感じるんだな、と思わせてくれました。
 
そんな感じで、痴呆症への切り口が素晴らしい〜。
 
最後まで観ると、主人公の老人が、痴呆の症状が出たあと、周りの人々にどんな対応をされてきたのか、なんとなく分かる脚本も、ミステリーのようで深みが十分。
それでいて、ベースは切ない家族ドラマ、という構成がお見事すぎる〜。
 
フランスの作家ローリアン・ゼレールさんが、自身が書いた戯曲を、主演アンソニー・ホプキンスに「当て書き」で脚色して監督。
 
ローリアン・ゼレールさんって、卓越したセンスの持ち主ですね。
「フランスのクリストファー・ノーラン」というか〜。
 
アンソニー・ホプキンスといえば、今回の演技で米アカデミー賞の主演男優賞を獲得〜。
 
誰しもが「チャドウィック・ボーズマンが受賞する」と思わせておいてからの受賞でした。
 
そして、受賞時のホプキンスは「実家でグーグー寝ていた」ことでもお馴染み。
 
伝説の「爆睡アカデミー」ですよ!
 
そんなホプキンスに、ボケ老人役が似合わないわけがない。
 
公私ともに、ボケの天才ですからね!
 


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「ヤクザと家族 The Family」★★★☆ [映画日記]

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この映画オモローイ。
 
ヤクザに魅了!
 
感触としては、西川美和監督作「すばらしき世界」に近いものがありますね。
 
「令和のヤクザは切ない」路線。
 
「ヤクザはピュア」路線ですよ!
 
劇中では、およそ20年の歳月が流れますけども。
時代の流れで、ヤクザ稼業が、どんなふうに衰退していったのかが、分かりやすく描かれています。
 
1990年代のエネルギッシュな暴力行為、華々しい権力抗争という、昔ながらのヤクザ表現から、令和の寂れたヤクザ表現へのギャップが凄まじい。
それに伴う人間ドラマが悲しすぎる〜。
 
今やヤクザや元・ヤクザは低収入で、世間から爪弾きにされる生活弱者だという。
「社会の闇、人間の闇」ですわな。
 
たとえ元・ヤクザが人を愛したとしても、相手からは煙たがれる、という場面がかわいそう。
 
好いて抱いた女から「アンタがいない時は人生うまくいってた。出てけーーっ!」と絶叫される場面とかは、泣きました。
 
主演のヤクザ役は綾野剛さんですけども、どうしてこんなに映画に出るたび毎度毎度、上手いんでしょうか。
この役で、本家のアカデミー賞でも狙えますよ。
 
組長役は舘ひろしさんですよ、舘ひろしさん。
 
猫ひろしさんじゃありませんから!
 
舘さんの演技を「組長にしてはダンディすぎるし、オシャレすぎる。こんな優しい組長もおらん」と思いながら観てましたけども。
 
それらの風合いは、「優しい父親風」という監督のオーダーによるものらしいです。
 
市原隼人さんの役が小さすぎてビックリしました。
 
あの隼人さんが子分役ですから!
 
「よく事務所は、こんな役を引き受けたな」と思ってましたけども、終盤まで観ると納得。
まあまあ良い役でした。
 
「ヤクザと家族」というタイトルも「なるほど」で、確かに「現代のヤクザは家族を持てない話」になっていましたね。
 
製作は河村光庸さん、監督・脚本は藤井道人さんという「新聞記者」で一発当てたコンビ。
 
新聞コンビですよ、紙コンビ!
 
今作を込みで、もしかして「日本のタブー」シリーズなのでしょうか?!
 
藤井道人さんなんて、今34歳ですよ。
この若さで、良い感じのヤクザ大作を作り上げるって、たいした手腕だと思います。
 
とくに今作では、若い監督だからこそ描けた「令和型・新チンピラ像」が斬新。
 
それはヤクザのポジションを奪う存在で、磯村勇斗くんが演じているのですが。
 
SNSやスマホカメラを駆使して有力者を脅し、昔のヤクザを一切恐れない、新手の人種。
 
ヤクザの親分宅に上がり込んだときは、磯村勇斗くんの子分はスマホで動画撮影をしながらの入室。
 
チンピラ・ユーチューバーですよ!
 
チンピラ新時代の幕開けを感じました、ITチンピラの夜明け!
 
磯村勇斗くんの役を主人公にした、スピンオフ作品を観てみたいです。
 
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「ザ・ハッスル」★★★ [映画日記]

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2019年のコメディ作品です。
 
劇中では、2人の女詐欺師が競い合ってます。
 
化かし合ってんの!
 
「オーシャンズ8」から、人の数を間引きした感じのお話です。
 
口減らしした感じですよ!
 
パッと見は「オーシャンズ2」って感じでした。
 
舞台である南フランスのロケーションが小粋です。
これは、ロケ地の勝利〜。
 
あっちが舞台だと、なんでもオシャレに見えるもんですな〜、詐欺映画でもでも!
 
やんちゃな詐欺師ペニー役を演じているのがレベル・ウィルソン、エレガントなベテラン詐欺師役はハサ美ということで。(←アン・ハサウェイ) 
 
日本で公開されていたら、まあまあヒットしたような気がしますけど未公開。
 
中盤から、ペニーが盲人を装って詐欺を働くんですよね〜。
そこが、炎上ポイントと判断されて公開が見送られたのかな?
 
今作はリメイク作品で、オリジナルは「ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ」(1988年)なのだそう。
 
「ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ」も、「寝室ものがたり」(1964年)のリメイク作品なのだそう。
 
遡るとオリジナルが製作された時代は1960年代。
 
大昔ですよ、太古!
 
当時は、盲人を装う話でも炎上などせず、「世の中そんなもんだろ」と受け入れられていたのかもしれません。
 
内容はラブコメ要素もあるし、ハサ美の大袈裟な小芝居も楽しいし、続編があるなら観たいと思う作品でしたけども。
本国ではウケなかったそうで、続編の製作予定もなくて残念〜。
 
レベル・ウィルソンは、コメディエンヌとしてシモネタも担当してましたけども。
 
米国のコメディエンヌは、シモネタが激しいほど人気が出ますので。
 
えげつないほど稼げんの!(←ホント、米国のコメディエンヌは気の毒)
 
レベル・ウィルソンのシモネタは、他の米国コメディエンヌと比べたら軽め。
 
サッパリさわやか、かぼすのようなシモネタでした!
 
製作もレベル・ウィルソンが兼任してるんですね。
レベル・ウィルソンて、米国では、こういう小粋なラブコメで天下を取りたいと思っているのかも。
 
「シモネタ × メグ・ライアン(死語)」みたいなポジションですよ!
 
 
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