「1917 命をかけた伝令」★★★☆ [映画日記]
舞台は第一次世界大戦中のヨーロッパ。
イギリス軍の若い兵士が「伝令」として、遠く離れた連隊に大事な命令を伝えようと走り回りますよ一目散に!
「全編ワンカット映像」が売りの作品ですけども。
ワンカット映像はNG出したら大変ですよ、もういっぺん最初から撮り直しですから。
戻りますから、ふりだしに!
伝令役2名の若手男優が、ほぼ無名。
無名がNGなんて出したら監督からシバかれる!
「クビにすっぞ!」とドヤされる!!
ワンカットならではの緊張感が漂っておりました。
まーね、実際の本編は、ときどき暗転するから、「全編まるごとワンカット映像」というわけではなく、「数パートに別れているワンカット映像をつなげた映像」でしたけどもね〜。
ワンカット映像にも関わらず、内容はアクション中心というのがスゴイです。
ワンカット映像の中に爆発があったり、飛行機が落ちてきたりしますから。
カメラも縦横無尽で「制作スタッフは大変そう。
「なんべんやったのリハーサル。どんだけやったのサービス残業」と思いました。
各パートのオチとなる場面には大物ゲストが登場。
マーク・ストロング、コリン・ファース、アンドリュー・スコット、ベネディクト・カンバーバッチ、リチャード・マッデンが、各パートがワンカットを終えそうな頃、良いところで出てきますよ。
顔を出すんですよ、ヒョイと!
観客を飽きさせない仕掛けかのようでした。
同時に、無名の若手男優が大物を相手にNG出さないか心配に。
ヒヤヒヤしすぎて、たまらん!
もういっそのことNG出してほしいくらい。
トチってくれたほうがスッキリしそう〜!
伝令は、味方の命を救いたい一心で行動している点が純粋なのですが。
クライマックスには、ベネディクト・カンバーバッチが演じる大佐が出てきて、伝令に向かって言い放った言葉が戦争の虚しさを物語ります。
観終わった後には「戦争とは何なのだろう。ばかばかしくて無意味」と思ってしまうのでした。
そんな感じでメッセージ性もバッチリなのですが。
サム・メンデス監督らしく、舞台は戦地でありながら、映像は、どこか美的なんですよね〜。
殺伐とした風景の中に、キラリとした美が潜んでる。
隠し味ですよ、カレーにチョコを入れるみたいな!
そして、あらゆる場面が絵画的〜。
川に死体が浮いていても、なんだか絵のよう。
絵になるどざえもんですよ!
それでいて地獄感はたっぷり。
美しい地獄絵図、というか〜。
肉や血が飛び散る場面をほどんど出さない見せ方で戦争を表現していて、さすがの巨匠タッチでした。
とくに夜の廃墟の場面は、美しいやら怖いやらで、夢に出てきそうなくらいインパクトのある名シーンでした。
時々、カラスや虫やネズミが出てきますけども。
それらはCGで付け加えられているのですが、それも良い出来〜。
西洋って、どこにでもネズミがいるのでしょうか、荒れ地だろうが森だろうが地下室だろうが、とにかく出てくるネズミさん!
中盤では、見事な演技を見せるネズ公!!
アカデミー賞最優秀・助演害獣賞があるとしたら、あのネズ公で決まり〜。