「ハウス・ジャック・ビルト」★★★ [映画日記]
世界的な鬼才ラース・フォン・トリアー監督の新作ですよ。
これまで手掛けた作品でも、ハードすぎる表現で世界中の観客を驚かせてきたラースさん。
世界をドン引きさせてきた人ですけども!
今回ラースさんが選んだ題材は「殺人鬼」ということで。
ただでさえ過激な表現をなさるお方が、よりによって、真正面から「人殺し」を描いてしまいました!
建築家志望の殺人鬼ジャックによる、数年に渡る連続殺人を描いた物語。
予想通り、倫理を無視した殺人描写が観客の心を折りました。
へし折られたんですよ!
あんまりへし折られすぎて「ああ、そこまでやるか。そんなことしちゃって大丈夫?!」と思って、少し笑ってしまいました。
近年、西洋におけるエンターテインメント界では性別や人種の多様化が求められ、「スケベでわがままな白人おじさん」は排除される傾向にありますが。
今回の作品はマ逆〜。
「スケベでわがままな白人おじさん」至上主義〜!
あえてなのでしょうか、「アンチ多様化」とも取れる殺人ばかりで、とくに女性への虐待がものすごいことに…。
今回の作品をハリウッドのトップ女優たちが観たら怒りそう〜。
観せない方がいいと思う〜、フランシス・マクドーマンドとかには〜。
もし観たら「お前か、ラース・フォン・トリアーとか言う奴は!こんな映画を作りやがって!!」と顔を真っ赤にして激怒するかもよ!
劇中、殺人心理として、なぜか建築アートを引用するところが独自で、頭のおかしさを増幅。
王道感すら漂う、なんとも堂々とした、壮大なサイコ・ホラー大作に仕上がっておりました。
「ラースさんも、少しは丸くなったのかも」と思う点は、物語のオチやエンディング曲に「全て創作だし〜。本気じゃないから許してね」みたいな、言い訳風のニュアンスが感じられたこと。
茶目っ気があるんですよ、不気味な!
昔は、何を表現するにも、観客を突き放したままバッサリ終わることが多かったラースさんの作品ですが。
前作「ニンフォマニアック」もそうですが、観客の後味を良くするためにか、ラストにギャグ(のような軽い要素)を付けるようになった気がします。
なぜか仕上げに砂糖を入れてくるんですよ、激辛料理なのに!
彼なりの調整なのでしょうか、よくわかりませんが。
そんな超・個性的なラース作品の上映館には、まあまあ人が入っているんですよね〜。
誰の指導も説教も聞かず、世界レベルの炎上さえ恐れることなく、ひたすら我が道を突き進む映像アーティストの彼。
情報に流されがちな現代では貴重で、誰もがなれる存在ではありません。
もはや「憧れの存在」になっているのかもしれません。